2021.10/24『豊かな平和に』

豊かな平和に

詩編721-14

Story1:高度成長とバブル崩壊

 1979年に「ジャパンアズナンバーワン」という本が大ヒットしました。経済力はアジアで群を抜き、経産省や大蔵省の力を高く評価するものでした。戦後の混乱から高度成長そしてバブル期の素晴らしさを達成した日本人を賞賛するものでした。現在の70代以上の方々が築いてきた日本です。

 しかし1990年代に入りバブルは崩壊します。バブル期は約10年間でした。90年代は、1970年代に生まれた人々が就職する時期です。1990年代には就職氷河期やフリーターや・ニート、ホームレスの世代を造りました。2000年代は特に大氷河期でした。その中で勝ちぬくことだけが目標とされ、負け組に目を向けることはない時代でした。そして2020年代になり、バブル経済の後遺症から脱出することは出来ていません。

Story2:ソロモン王の最後

時代は川の流れのように変わっていきます。皆さんは子どもにどんな遺言を残すでしょうか。財産を残すことも大切でしょう。人生に対する生き方や考え方を残すのも大切でしょう。子や孫は自分たち夫婦から何を受け継ぐでしょうか。親戚や家族は親から何を継承していけるでしょうか?

72編の最後を見て下さい。「エッサイの子ダビデの祈りの終わり」とあります。父ダビデが息子ソロモンに願った祈りと願いとして書かれています。

ソロモンは知恵の王として有名です。帝国を築きました。ソロモンは国家を繫栄させるために大規模な土木事業や港湾事業を行います。そのために諸国から材料を集め、交易も盛んになります。その意味ではダビデの良き後継者でした。

しかしソロモンの最後をご存じでしょう。彼は金銭と事業欲のために、イスラエルの神を忘れていくのです。老人になったソロモン、晩年のソロモンは悲劇的です。ハダドとレゾンヤロブアムという3人の王はソロモンに敵対し、戦乱に至ります。また主は二度に渡ってソロモンに現れますが、ソロモンは神の言葉に服従することはありません。年をとったソロモンは聞く耳を持たない頑固な老人になりました。まさに「神と富の両方に兼ね仕えることはできない。」という結末です。

「ソロモンはシドン人の女神シュレトレト、アンモン人の憎むべき神ミルコムに従った。ソロモンは主の目に悪とされることを行い、父ダビデのようには主に従い通さなかった。そのころ、ソロモンはモアブ人の憎むべき神ケモシュのために、エルサレムの東の山に聖なる高台を築いた。アンモン人の憎むべき神モレクの為にもそうした。」⦅列王上113-P548

Story3:SDG

 バブル期には荒れる教室や校内暴力が問題になり、多くの人は勝ち組になるようにと急がされました。ニートやホームレスや孤食など、人々の心が荒れた時代を思い越します。また山々や丘が荒らされ、破壊されていきました。日本もバブル全盛期から、公害問題や原発問題やパワハラや性差別などが日本でも起こりました。

 私は九州鹿児島の生まれですが、帰省するたびに私の町がさびれ、田畑が荒れているのを見て来ました。まことに心の痛む現実です。自分もまた無自覚に生きて来た者であることを悔います。一極集中化の加害者でした。

皆さんは「SDGs」という言葉をご存じでしょう。「サステイナブル・ディベロップメント・ゴールズ(維持可能目標)」の略です。2000年前後に生まれた学生たちの「共通言語」です。開発一辺倒から貧困・飢餓の問題へシフトしました。男性中主義からクオタ制の導入の時代に変わりました。エネルギ-消費一辺倒から省エネの時代に変わりました。人と国の格差拡大の時代から不平等の解消の時代になりました。作る責任と使う責任の両方が問題にされる時代です。気候変動・海や山や陸の豊かさの維持や自然の維持も大きな問題です。「バブル時代」の枠組みから完全に移動しています。教会が伝道する時、これらの課題を共有できる信仰が求められています

Story4; ダビデの祈り

さて詩編に帰って、ダビデの具体的な祈りを見ていきましょう。

第一に、王が貧しい者を救いますようにという祈りです。

 「貧しい民」(2)、「この貧しい人々を治め、乏しい子らを救い、虐げる者を砕きますように。」(4)、「王が助けを求めて叫ぶ乏しい人を、助ける者ない貧しい人を救いますように。」(12)、「弱い人、乏しい人を憐れみ、乏しい人の命を救い、不法に虐げる者から彼らの命を贖いますように。」と幾度も出てきます。

ミャンマーのクーデターのことで祈り会を重ねています。私は戦争の体験がありません。またクーデターの経験もありません。しかし今回のミャンマーのことを学び、戦争、軍隊、民衆、軍の非人道さを自分の事として学びました。理屈や理論ではなく、体で感じる実体験です。

 家を焼かれる人々の苦しみ、息子や娘を殺される痛み、食料を強奪される理不尽さ、形式のみの軍事裁判の非人道性など我がこととして学べました。

人は祈ってどうなるのか、祈りは無力ではないのか、信仰をもっていても意味がないと言う人もいる。バプテスト同盟の皆さんの働きは素晴らしいです。リーダーの渡辺小さゆりさんは、祈り自体は効力の問題ではなく、祈りそのものが「抵抗運動」の印であると語って下さいました。

第二に自然の回復の祈りです。「山々が民に平和をもたらす。丘が恵みをもたらしますように。」(3)、「太陽と共に長らえ、月のある限り代々長らえますように。」(5)、「牧場に降る雨となり、地を潤す豊かな雨となりますように。」(7)、「月が失われる時までも、豊かな平和に恵まれますように。」

 山々が平和をもたらす、丘が恵みを与える、王は優しい雨となり、地を潤す豊かな雨となるように。そして平和に恵まれるようにと祈ります。

 

 山や丘が王に優しさを教え、優しい雨が王の在り方を教えているのです。王は丘や優しい雨や太陽から王の在り方を学ぶべきだと語っています。