10月25日礼拝メッセージ

ベニスの商人

~心臓の肉一ポンド、ただし血を流さずに~

Story 1 狡猾な商人たち

皆さんは「ベニスの商人」という劇をご存じだと思います。シェイクスピアの傑作の一つです。

アントニオは友人のために、シャイロックという高利貸しからお金を借りようとします。シャイロックは汚い金貸しとして有名で、アントニオを憎んでいました。しかしシャイロックはアントニオにお金を貸すことを承諾します。しかも利子もいらないと言うのです。代わりに3か月以内に返済しないとアントニオの心臓の肉一ポンドを取り立てるという契約を申し出ます。アントニオは、今航海に出ている船が帰国すれば簡単に返済できると考えて、その契約を結びます。

しかしアントニオの船が難破したという話が広がり、アントニオは返済ができなくなります。そこで裁判になります。アントニオの婚約者ポーシャは「心臓の肉一ポンドを切りとっても良いが、その際契約には血は含まれていないので、血を一滴も流してはならい」と言います。そんなことは出来ないので、シャイロックは裁判に負けてしまいます。逆にアントニオに危害を加えた罪で、有罪となります。しかしポーシャはシャイロックがユダヤ教徒からキリスト教徒になるなら命を助けると言います。ポーシャはキリスト教徒の慈悲だと自慢します。シャイロックは生き延びるためにキリスト教徒に改宗します。しかしこの改宗がどれほどのものであったか、誰も知りません。実際の舞台では、敵への憎しみ、仕返し、金銭、名誉や欲、生き抜く知恵、人間の狡猾さが入り乱れ、悪も善も入り乱れる世界が演じられます。

Story 2 二つを同時に

コヘレトは「善人がその善の故に滅びることもある。悪人がその悪のゆえに長らえることもある。」(15)、「善人過ぎるな。賢すぎるな。」(16)、「悪事を過ごすな。愚かすぎるな。」(17)と語ります。人生は素朴で単純に人を信頼しすぎると騙され、裏切られる。また悪人過ぎても信頼されない。ある時は人を疑ってみる、しかし疑いすぎると何も信頼できなくなる。時には人から遠ざかり距離を取る。時には信頼する関係を賢く築くために近づく。「一つのことをつかむのは良いが、他のことからも手を離すな。」(18)とコヘレトは語ります。善、悪、賢い、愚か両方を、天秤にかけながら、慎重に人生や人を見極めて、生きることが大切だとコヘレトは語ります。

Story3「神の知恵」

さて、ここで聖書は単に処世訓を語り「徳の中庸」を語りたいのでしょうか。また「清濁併せ飲む生き方」を示すだけでしょうか。それならば聖書に特に入れる必要はないと考えます。聖書は処世訓を背景・土台にとして語りながら、一層の深みへ導きます。聖書をさらに読み解く必要があります。

それは「知恵」ということ言葉にあります。「知恵は賢者を力づける。」(19)、「知恵は遺産に劣らず良いもの」(11)、「知恵の陰に宿れば、銀の陰に宿る」(12)、「知恵は持ち主に命を与える。」(12)とあります。ヘブル語で「ホックマー」という単語です。70人訳聖書では、「ソフィア」と訳しています。この「ホックマー・ソフィア・知恵」は「神の言葉」、「神自身」、「聖霊」その方、自信を示します。「人の持つ知恵」としても使われるので、注意して読む必要があります。

知恵は、第一に「神を畏れること」と繋がります。18節の後半です。「神を畏れ敬えば」(18)とあります。神の知恵を知るには、エロヒームなる神を畏れ敬い、神という知恵を礼拝するのです。「神という知恵」を得ることを勧めます。

第二に、この知恵に信頼するならば「善・悪・賢い・愚か」という世界を脱出して神の言葉と共に生きる世界へ向かうことができるのです。これを求めて、知恵と共に生きることが箴言やコヘレトの信仰姿勢です。「一切は空である。」と語ったコヘレトに希望を与え、空の世界から贖い出すのは、この「コッホマー・ソフィア・知恵」です。この「知恵」は人間の中に、人間の中には存在せず、人間の外からやって来る方だとも言われます。「知恵による救い」は、人間の外から、天から到来します。

Story4神の知恵キリスト   キリストコヘレトから300年後に、パウロは「神の知恵であるキリスト」(コリ124)とイエス様のことを呼んでいます。パウロは「救い主・贖い主」と到来したイエス・キリスト、また神であり、聖霊であるイエス・キリストを「神の知恵・ソフィア」と呼びました。神は、人を「神の知恵・ソフィア・コッホマー」であるキリストと共に生きるようにして下さいました。この「知恵」と共に生きることが信仰生活です。

今週一週間神の知恵を伴走者・同伴者として生きて参りましょう。神の知恵、コッホマー、ソフィアは常に共にいてくださるのです。