9月13日礼拝メッセージ

     母が共に

「我ひとり悩むのでなく」:水野原三


Story 1:心を分かち合う

「我ひとり悩むのではなく 母が共に

 我ひとり聞くのではなく 母が共に

 我ひとり信じるのではなく母が共に

 我ひとり祈るのではなく 母が共に

 我ひとり喜ぶのではなく 母が共に

 我ひとり待つのではなく母が共に」

 

 これは水野源蔵さんの詩です。水野さんは長野県長野市の隣り、坂上と言う町で生まれました。19468月に坂上で発生した集団赤痢が発生して、一カ月で患者数は286名に達しました。坂上小学校でも55名が真正赤痢となり、この時4年生の水野さんも発病し、脳性麻痺で首から下と話す言葉の自由を奪われたのです。宮尾隆邦牧師により、13歳で洗礼を受けてキリスト者となりました。そして多くの信仰の詩を作りました。彼は声も出ない、手足の動かない中で、お母さんやお姉さんが指す、あいうえおに、まばたきで合図を送って、詩作を続けました。

 この詩は水野源蔵さんのお母さんがどんなときにも一緒にいてくれることを歌ったものです。人は誰でも、一人ぼっちであることを経験します。しかしその時に、相談相手が居てくれ、誰かが一緒にいて、悩んだり、話を聞いてくれたり、祈ったり、待ってくれたりすると安心や幸せを感じるものです。

Story 2:相談への対応

 イスラエルの民も砂漠の生活の中で様々に悩みや苦しみを経験していたのです。

モーセはイスラエルの民の相談相手でありました。14節に「あなた一人だけが坐に着いて、民は朝から晩まであなたの裁きを待って並んでいる。」人々は何か事件や相談事があると、モーセのところに相談に来たり、時には悩みを聞いてもらったりしたのです。16節で「民は神に問うために私のところに来るのです。彼らの間に何か事件が起こると、私のところに来ますので、わたしはそれを裁き、また神の掟と指示とを知らせるのです。」と語っています。痛みや問題の解決を探していたのです。痛みや悲しみを聴き取る働きをしていたのです。カウンセラーのようです。

 さらにモーセは「神の掟と指示とを知らせる」とありますので、神様の御心を求めて、祈って神の言葉を聞いていたのです。一人静まり祈って神の言葉を聞く時間も大切にしていたのでしょう。モーセは神と人の間にあって、その仲介者、執り成し手として働いています。この姿はキリスト者の生き方に似ているように思います。

Story3:痛みを分け合う

Kさんは30歳で同期の人よりも早く管理職となりました。その頃56歳のお父さんが若年性認知症と診断されました。やがて自転車で出かけたまま帰って来なくなり、警察に保護されるようにもなりました。Kさんは仕事も多忙で、イライラするようになり、心身共に疲れ果ててしまいました。やがて施設にお父さんを入所させました。しかし入居後1カ月で、お父さんは体調を崩し、亡くなってしまいました。Kさんは「入居させずに自分が頑張れば、こんなに早く死ななかったのではないか」と自分を責めました。会社でこんなことを相談する訳にもいかず、一人ずっと秘密し、苦しみました。

 しかしある日同僚のBさんが話してくれました。「先日5年間暮らした母がなくなってね。もうちょっと会いに行けば良かった。家でみとってあげたかったと後悔している。後悔の気持ちが繰り返し湧いてくる。」と話してくれたのです。そしてKさんも同じ経験をしていると話しました。Bさんは「身近で介護経験がある人はいないと思っていた。みんな話さないけれど、みんな苦しい経験をしているんだね。話が出来て嬉しい。」と言いました。自責の念を語り合う友が与えられ、安心感を体験しました。隠れた苦しみを話せることで平安を経験します。

Story4:役割の分担

 しゅうとエテロは、モーセにアドバイスします。21節「あなたは民の全員の中から、神を畏れる有能な人で、不正な利得を憎み、信頼に値する人物を選び、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長として民の上に立たせなさい。」と。使徒言行録6章と似ています。

その時に求められるのは第一に「神を畏れる有能な人、霊と知恵に満ちた人」です。人に横柄であったり、自己中であったり、対応が未熟な人は混乱を招きます。祈りの生活を充分にとり、神の言葉の仲介者となる姿勢を求めています。神を身近に感じ、神と共に生きる人を選びます。そして千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長と働きをわけていきます。これによってより細かい配慮が多くの人に出来るようになります。

 私たちが知っているのは、その人の氷山の一角の頭の部分です。水面下には長く、深い、痛みや悲しみや語りたいことがあり、表からは見えません。KさんやBさんのように、普通はあまり話せることではないのです。モーセはこの様な世界に出会うことでもあったと思います。

わたしたちもささやかですが、重荷を分かち合い、祈り合いつつ生活したいと思います。今日はここに祈りの課題を持って来ました。書かれた方々の背後には色々な課題が隠れています。この水面下の世界に聖霊が働くように祈りたいと思います。

5分間時間を取って共に祈りの時を持ちましょう。