畏れるということ
「男の子ならば殺し、女の子ならばいかしておけ。」
(出エジプト記1章16節)
Story1 神を畏れる
出エジプト記1章後半は、ファラオの命令に反して男の子を生かし、子どもを殺害しなかった助産婦の物語です。彼女たちのことを聖書は「神を畏れていた」(17・21)と2度書いています。「神ご自身もまた二人の助産婦たちに恵みを施された」(20)、「神は彼女たちに子宝を恵まれた」(21)と書いております。彼女たちの行為を神ご自身が喜ばれたことが分かります。神は助産婦の立場に立っています。
他方、ファラオは自分に敵対すると思える男の子は殺害し、自分に謀反を起こすことのない女の子は生かそうとします。ファラオは「命」を王権の維持、体制の維持のために使おうとします。ファラオが命を支配します。
命はファラオのものではなく、神のものです。人のものではなく、神ご自身の大切な宝です。「王のもの」として「神が与えた命」を利用させてはなりません。神様が与えて下さった命を賢く守り抜くのです。神は命の創造主です。これが政治と宗教の分離の根源です。命は主のものです。命の創造主は人ではなく、神ご自身です。
Story 2 杉浦千畝物語
今日の聖書箇所は、王の命令に従わず、男の子の命を助けた助産婦の話ですが、皆さんは、杉浦千畝さんをご存じでしょう。彼はリトアニアという国のカウナスという町の外交官でした。カウナスにはナチスの迫害を逃れて、ポーランドやオーストリアからやって来たユダヤ人が数万にいました。ゲシュタポの監視も厳しく、カウナスのユダヤ人のシナゴーグも焼き討ちされ、ホロコーストの噂が広がっていました。このような中で1935年後半に、ドイツと日本の外務省はユダヤ人にビザ(通過査証)を発給しないように命令を出しました。しかし外交官の杉浦千畝さんは両国家の意向に反して、ユダヤ人にビザを発行しました。それは天皇にも、ヒトラーにも反対することでした。「国と王の意向」に反して、ユダヤ人の命を助けたのです。ユダヤ人たちは、シベリア鉄道を使ってウラジオストックに行き、満州に渡り、満州から敦賀港に到着しました。1941年9月までにそのほとんどのユダヤ人が、船でイスラエルやアメリカへ渡航しました。その数は約5000名~6000名であったと言われています。1945年5月に杉浦さん一家は、リトアニアでソ連軍に逮捕され、シベリアに抑留されます。シベリアから満州、満州から博多へそして藤沢市鵠沼松ガ岡3丁目に定住します。この間約1年でした。鵠沼の家は東京裁判で絞首刑なった首相広田弘毅の自宅でした。1946年に外務省から「強制的な退職命令」が出され、彼は職を失います。失職直後に三男を失います。シベリアの長旅に耐えることができなかったのです。後年、鎌倉に住み、最後は鎌倉の病院で亡くなり、鎌倉霊園に葬られました。彼はハリストス正教会(ロシア正教会)の2代目のクリスチャンでした。現在も命日には墓前礼拝が行われています。杉浦さんの名誉の回復のために、リトアニア、イスラエル、誕生地岐阜県美濃市、カナダ、アメリカ、ポーランドなどに記念碑があります。彼は「諸国民の中の正義の人」と世界で呼ばれ、75年たって、その子孫たちは世界中にひろがりました。
Story 3 教会の告白
助産婦たちはファラオの命令に従わず、子どもたちを助けました。ここに一冊の資料があります。2003年5月11日(日)午後3時から行われた湘南台バプテスト教会の「教会組織資料」です。13回に渡って学習会を行い、周到な準備の中で完成したものです。これは私たちの教会がどんな教会であり、どんな教会であろうするのかを「自分たちで、公的に告白した文章」です。私たちの「教会の目標、教会形成道しるべ」です。 その中に「信仰告白」があります。その第8番目に「教会と国家」の項目があります。次のように書かれています。「教会は主であるイエス・キリストの教えに従って、政教分離の原則を貫き、国家に対して常に目を注いで、神の御心に反しない限り、国家のために執り成しの祈りをします。私たちの主なるイエス・キリストが、この世の諸権力に対しても、主として、また王として支配したもうことを、私たちは信じます。」
「この世の諸権力に対しても神は主として働く」。つまり聖書の神はこの世の権威にも働きかける。聖書の語る神ご自身に国家もまた服従すべきである。この世の権力が絶対的なものではない。そう告白します。「主、王として、この世の諸権力に対して、イエス・キリストは働く」のです。
聖書は語ります。「神は御心のままに満ちあふれるものを余すところなく、御子の内に宿らせ、その十字架の血によって平和を打ち立て、地にあるものであれ、天にあるものであれ、万物をただ御子によって、ご自分と和解させられました。」キリストは平和です。共にキリストの平和を世に伝えましょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
1945年8月
7月16日 人類初の原爆実験(マンハッタン計画)
8月 2日 ポツダム会議終了
3,5,7,13日 小田原空襲
5日 鎌倉空襲
6日 広島に原爆投下
8日 ヤルタ会談;日ソ不可侵条約破棄通告 ソ連満州国侵入;満州国崩壊
9日 長崎に原爆投下
10日 御前会議 ポツダム宣言受諾について
13日 藤沢市空襲
13日 ビルマ・シッタン戦
14日 御前会議 ポツダム宣言受諾決定
14日 宮城事件(録音盤事件)
15日 玉音放送(大東亜戦争終結ノ詔勅)
17日 インドネシア独立宣言
18日 皇帝溥儀満州国解体・退位宣言
20日 久米島守備隊虐殺事件
20日 米軍による沖縄諮詢会発足
22日 樺太・三船殉教事件(1700名)
30日 マッカーサー厚木到着
9月 2日 降伏文書調印式(ミズーリ号)
7日 沖縄降伏文書調印式(嘉手納基地)